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  4、ヒーター温度
    
 
ヒーターの寿命には発熱線が高温に達し、劣化して破損・熔損するものと、ESC(環境応力腐食割れ)が 原因で破損するものが多く見られます。前記は気中の加熱、後記は液中の加熱に起こりやすい現象です。
 ここでは、ヒーター線部分が何度くらいまで上がるか計算します。

4-1、

外気温度20℃中で使用するカートリッジヒーターのヒーター線の温度を知りたい。
形状・仕様は外径Φ12、SUS肉厚1mm、MgO充填スェージング、発熱線有効長50cm、電力600W

ソフトを立ち上げ、放熱計算→ヒーター温度をクリックする。通常はこの状態で立ち上がるようになっています。外気温度20℃、MgO熱伝導率37W/m・℃、MgO層外径10mm、ヒーター線巻き外径5mm、SUS肉厚1mm、長さ0.5m、電力600Wを入力し、実行またはEnterを押す。MgO層の内側温度欄にヒーター線付近の温度722℃が表示されます。ヒーター線そのものの温度ではありませんが、ヒーター線およびMgOの熱伝導率から考えてプラス10〜20℃以内に収まっていると考えます。(線の径、巻き径、巻きピッチなどにより異なります。)
この条件では実際はもう少し高くなっていると思います。MgOの熱伝導率はこの温度では14W/m・℃くらいです。長期間のヒーター寿命にはこの温度は上限界と考えます。

4-2、


フィン付ヒーターの発熱線温度
流れに直角、水平に置かれたワット密度5w/cm2の16φカートリッジヒーターに厚さ0.25mm立ち上がり7mmのフィンが4mmピッチで巻かれている。発熱線の温度はいくらになるか。

まず、資料-強制対流熱伝達率とクリックし、121式仮想熱伝達率を確認する。画面左下の熱伝達率計算をクリックし、熱伝達率の式右欄に「201」を記入する。次いで選択−戻るボタンをクリックする。表示された項目について、その右欄に値を記入する。(以下詳細は下記フィン付ヒータの伝熱計算を参照)
 次いで、フィンを含めた熱伝達率を求める。伝熱計算ソフトの資料-応用補足とクリックし、201式仮想熱伝達率を確認する。熱伝達率の式右欄に「201」を記入する。次いで選択−戻るボタンをクリックする。表示された項目について、その右欄に値を記入する。計算実行をクリックし、仮想熱伝達率(仮想H)を読み取る。次に、フィン部およびフィン部以外の熱伝達率からh=(h1*s1+h2*s2)/(s1+s2)を用いて円管平均した近似値熱伝達率を求める。
 ヒーター温度画面で各数値を記入し、画面左方の対流熱伝達率欄に平均した熱伝達率、表面の放射率欄に放射率0.9を入れ、発熱線温度を計算する。ヒーター長さを0.3m、熱量はワット密度を5w/cm2にするため750wを入れる。
フィン付ヒータの伝熱計算




熱伝達計算の式 

  計算には他にもいろいろ実験式がありますが、ここでは下の式を用いました。

1、表面の放熱

  Q=Qh+Qt=Qλ    Qh:放射放熱量          Qh=(Tg^4-Ts^4)*A*B*σ
                                   Tg:外側表面温度 
                                   Ts:外気温度
                                   A:放熱面積
                                   B:放射率
                                   σ:ステファン-ボルツマン定数

               Qt:対流放熱量          Qt=(Tg-Ts)*A*C
                                   A:放熱面積
                                   C:対流熱伝達率

               Qλ:SUSおよびMgO内の伝熱量
2、MgO層、SUS層伝熱

 T1=To+A1*Ln(r1/r2)   A1=Q/(λ1*2*π*L)    To:SUS表面温度 
 T2=T1+A2*Ln(r2/r3)   A2=Q/(λ2*2*π*L)    T1:SUS内側温度・MgO外側温度
                                   T2:MgO内側温度・発熱線部温度
                                   Q:電力W数
                                   λ1:SUS熱伝導率
                                   λ2:MgO熱伝導率
                                   r1:SUS外径
                                   r2:SUS内径
                                   r3:発熱線部外径
                                   L:長さ



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